不動産の購入諸費用を日韓で比較|1億円モデルで見る取得税・仲介手数料・登記費用【2026】

不動産

不動産を買うとき、実際に出ていくお金は物件価格だけではありません。税金、仲介手数料、登記の費用が上に乗ります。この上乗せ分が、日本と韓国ではかなり違います。

この記事では、前回で決めた共通モデル——日本の1億円のマンション韓国の10億ウォンのアパート——を使って、買うときにいくらかかるのかを内訳ごとに並べます。

この記事は2026年8月時点の公的情報をもとにした情報提供です。金額はすべて条件を固定したモデルケースであり、実際の税額は物件の評価額・所在地・取得者の保有状況・時期によって変わります。特定の投資を勧めるものではありません。

モデルの前提

比較を成立させるため、次を固定します。

日本韓国
物件東京23区・中古区分マンションソウル市内・中古アパート
価格1億円10億ウォン
用途投資用(自分では住まない)投資用(自分では住まない)
買う人非居住者・この1件のみ保有非居住者・この1件のみ保有
支払い現金(ローンなし)現金(ローンなし)
専有面積60㎡程度85㎡以下
評価額の想定固定資産税評価額 7,000万円(建物1,500万+土地5,500万)時価標準額 7億ウォン
  • 換算は「1円 ≒ 10ウォン」の概算です。
  • 保有件数を1件に固定しているのは、韓国では保有件数によって取得税が大きく変わる制度があるためです。多数保有の場合の話は後述します。
  • ローンなしにしたのは、抵当権設定登記の費用を比較から外して、物件そのものにかかる費用を見やすくするためです。

日本:1億円のマンションを買うときの内訳

① 仲介手数料 — 約336万円

宅地建物取引業法により上限が決まっており、売買価格が400万円を超える部分は「売買価格 × 3% + 6万円」に消費税を加えた額が上限です。

“` (1億円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 336万6,000円 “`

実務ではこの上限額がそのまま請求されるのが一般的です。諸費用の中で最大の項目になります。

② 印紙税 — 数万円

売買契約書に貼る印紙です。金額の階級ごとに決まっており、不動産の譲渡契約書には軽減措置が設けられています。1億円前後は階級の境目にあたるため、契約金額が1億円ちょうどか、1円でも超えるかで税額が変わります

契約金額軽減後の税額
5,000万円超 1億円以下3万円
1億円超 5億円以下6万円

本モデルは1億円ちょうどなので3万円です。1円でも超えると6万円になります。なおこの軽減措置の適用期限は2027年(令和9年)3月31日までです。

③ 登録免許税 — 約112万円

所有権を自分名義に移すための税金です。売買価格ではなく固定資産税評価額に対してかかります。

対象評価額税率税額
建物1,500万円2.0%30万円
土地(持分)5,500万円1.5%(軽減)82万5,000円
合計約112万5,000円

土地の1.5%は軽減税率(本則2.0%)で、2029年(令和11年)3月31日までの登記に適用されます。

なお建物に2.0%を使っているのは、投資用だからです。自分で住む住宅なら0.3%まで下がる特例がありますが、賃貸用には使えません。ここだけで約25万円の差が出ます。

ここで投資家にとって重要な点があります。自分が住む住宅なら建物の税率が大きく下がる軽減措置がありますが、投資用では使えません。 同じ物件でも、住むか貸すかで税額が変わります。

④ 司法書士報酬 — 10〜15万円程度

登記手続きの代理報酬です。金額は事務所によって異なります。

⑤ 不動産取得税 — 約127万円

買った後、数か月してから納税通知が届きます。 忘れた頃に来るため、初期費用の計算から抜け落ちやすい項目です。

対象課税標準税率税額
建物1,500万円3%45万円
土地(持分)5,500万円 × 1/23%82万5,000円
合計約127万5,000円

土地は課税標準が半分になる特例があります。一方、中古住宅の控除は自分が住む場合の制度なので、投資用では使えません。

⑥ 固定資産税・都市計画税の精算 — 約22万円

これは税金ではなく、売主との間の精算です。その年の税金は1月1日時点の所有者に課されるため、引渡日以降の分を日割りで売主に払うのが商慣行になっています。引渡しが年の前半か後半かで金額が変わります。

日本側の合計

項目概算
仲介手数料336.6万円
印紙税数万円
登録免許税112.5万円
司法書士報酬12万円
不動産取得税127.5万円
固都税精算(年44万円の半年分)22万円
火災保険(5年)8万円
合計約620万円

物件価格の約6.2%です。

固都税の年額44万円は第3回(保有税)で計算しています。年の途中で買えばその残り期間分を精算するため、ここでは半年分としています。

韓国:10億ウォンのアパートを買うときの内訳

① 取得税 — 3,300万ウォン程度

韓国の購入時費用の主役はこれです。住宅の取得には価格帯ごとの税率が定められ、9億ウォンを超える帯は3%とされています。これに地方教育税が加算されます。

農漁村特別税は専有面積が一定規模を超える場合にかかるため、85㎡以下のモデルでは対象外です。

“` 10億ウォン × 3.0%(取得税) = 3,000万ウォン 10億ウォン × 0.3%(地方教育税) = 300万ウォン 合計 約3,300万ウォン(≒ 約330万円) “`

⚠️ ここが韓国側で最も変動が大きい部分です。 韓国には保有件数が増えると取得税が大幅に加重される制度があり、その扱いは政策によってたびたび見直されています。2件目以降を買う場合は、この記事の数字がまったく当てはまりません。

② 仲介報酬— 500万ウォン程度+付加価値税

日本と最も差がつく項目です。韓国は価格帯ごとに上限料率が定められ、その範囲内で依頼人と仲介業者が協議して決めます。10億ウォンの帯の上限料率は1%を下回ります。

“` 10億ウォン × 0.5%(上限料率) = 500万ウォン + 付加価値税 “`

日本の336.6万円に対し、韓国は約50万円相当。同じ役務に対して数倍の開きがあります。

③ 印紙税— 十数万ウォン

日本と同じく契約書に対する税金で、金額の階級で決まります。

④ 法務士報酬・登記申請手数料(登記費用)— 数十万ウォン

登記手続きの代理報酬と、登記申請の手数料です。この2つは金額の桁が違います。

登記申請手数料そのものは1万〜1万8,000ウォン(電子申請なら1万ウォン)と、ごく少額です。数十万ウォンという負担のほとんどは法務士の報酬のほうです。

そして日本と違うのが、韓国には法務士報酬の上限規定がないという点です。かつて大韓法務士会が定めていた報酬基準表は2020年に廃止され、現在は自由価格になっています。10億ウォン級のアパート登記では40万〜80万ウォン程度が実務上の相場ですが、あくまで相場であって上限ではありません。 見積もりを取る前提で考える項目です。

⑤ 国民住宅債券— 見落とされやすい実質負担

日本にはない項目です。 所有権移転登記の際、時価標準額に応じた額の国民住宅債券を購入する義務があります。

多くの買主はこの債券を保有せず、その場で売却します。ただし額面より安く売ることになるため、その差額が実質的な負担になります。表面上は「債券を買って売っただけ」ですが、手元からは数百万ウォン規模のお金が消えます。

初期費用を見積もるときに漏れやすいので、韓国側では必ず数えるべき項目です。

韓国側の合計

項目概算
取得税+地方教育税3,300万ウォン
仲介報酬(+付加価値税)550万ウォン
印紙税15万ウォン
法務士報酬・登記手数料80万ウォン
国民住宅債券(実質負担)200万ウォン
合計約4,150万ウォン

物件価格の約4.1%です。

並べて見る

項目日本(1億円)韓国(10億ウォン)
取得に対する税不動産取得税 127.5万円<br>登録免許税 112.5万円<br>印紙税 数万円取得税+地方教育税 3,300万ウォン<br>印紙税 15万ウォン
仲介336.6万円550万ウォン(≒55万円)
登記の手続き司法書士 12万円法務士等 80万ウォン
その他固都税精算 22万円<br>火災保険 8万円国民住宅債券 200万ウォン
合計約620万円約4,150万ウォン(≒415万円)
物件価格比約6.2%約4.1%

差がどこから来ているか

① 仲介手数料が6倍以上違う。 日本の3%+6万円という上限は、高額物件になるほど絶対額が大きくなります。韓国は高額帯でも料率が1%を下回るよう設計されています。この1項目だけで約280万円の差です。

② 日本は取得への課税が二重になっている。 日本は不動産取得税(地方税)と登録免許税(国税)が別々にかかります。韓国は取得税に一本化されており、地方教育税が上乗せされる形です。合計税額で見ると日本240万円に対し韓国330万円で韓国のほうが重いのですが、日本は仲介手数料で逆転します。

③ 韓国には債券購入という独自の負担がある。 表に出にくいぶん、見積もりから漏れやすい項目です。

非居住者が買うときの追加の手間

どちらの国でも、その国に住んでいない人が買う場合には書類が変わります。

日本韓国
本人確認印鑑証明書がないため、署名証明(サイン証明)を在外公館等で取得不動産登記用登録番号の取得が必要(外国人登録番号がない場合)。発行は出入国・外国人官署(ソウル出入国・外国人庁等)
住所の証明住民票がないため、在留証明または宣誓供述書本国の住所証明書類(翻訳・認証が必要な場合あり)
取得後特段の届出は原則不要外国人としての取得の届出が必要(期限あり)

書類の取得に時間がかかるため、決済日から逆算して早めに動く必要があります。費用としては数万円程度ですが、スケジュールへの影響は小さくありません。

まとめ

  • 買うときの費用は、日本のほうが物件価格に対して重い(モデルでは6.2%と4.1%)
  • 差の最大要因は仲介手数料。日本は3%+6万円、韓国は高額帯でも1%を下回る
  • 税金だけを見ると韓国のほうが重い。取得税が3%台でまとまってかかる
  • 日本の不動産取得税は後から来るため、資金計画から抜けやすい
  • 韓国の国民住宅債券は日本にない項目で、見積もりから漏れやすい
  • 韓国の取得税は保有件数によって大きく変わる。 2件目以降はこの記事の前提が成立しない

買うときの費用は一度きりですが、次にかかるのは毎年出ていくお金です。次回は保有中の税金——日本の固定資産税・都市計画税と、韓国の財産税・総合不動産税を比較します。

本記事の金額はすべてモデルケースです。実際の税額は評価額・所在地・保有状況・時期によって変わり、制度自体も改正されます。実行の前には必ず最新の公式情報と専門家の確認をお願いします。


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