※本記事の情報は2026年8月時点の国土交通省の公表資料に基づく情報提供です。補助の実施状況・金額は自治体によって異なるため、個別の適用は物件所在地の自治体窓口でご確認ください。
「入居者を選べず空室が埋まらない」「高齢者・外国人の入居を断り続けているが、それでいいのか」——そんな悩みを抱える大家・自主管理オーナー向けに、住宅セーフティネット制度を取り上げます。
「登録すると何が得か」「改修費は出るのか」「入居者トラブル時に誰が支援してくれるのか」を順に整理します。2025年10月1日に改正法が施行され、この分野は制度の中身が大きく変わりました。 数年前の解説を読んで判断すると、いまの制度と食い違います。
住宅セーフティネット制度とは
住宅セーフティネット制度は、高齢者・低額所得者・障害者・外国人・子育て世帯など、住宅の確保に配慮を要する方(住宅確保要配慮者)の入居を拒まない賃貸住宅を、大家が都道府県等に登録できる仕組みです。登録された住宅は、専用のポータルサイト等で検索できるようになります。
制度は、①住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度、②登録住宅の改修や入居者への経済的な支援、③住宅確保要配慮者に対する居住支援、という3つの柱で構成されています。
出典:国土交通省「住宅セーフティネット制度」/セーフティネット住宅情報提供システム
外国人は、この住宅確保要配慮者に含まれる代表的な属性の一つです。「保証人がいない」「日本語での契約手続きに不安がある」といった理由で入居を断られやすい層に対し、制度面から受け皿を用意する狙いがあります。
法改正で何が変わったか
改正法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律・令和6年法律第43号)は2024年6月5日に公布され、主要部分が 2025年(令和7年)10月1日に施行されました。すでに動いている現行制度です。
① 居住サポート住宅の認定制度ができた
法律上の名称は「居住安定援助賃貸住宅」、通称が居住サポート住宅です。従来の登録住宅(要配慮者の入居を拒まない住宅)を土台にしつつ、入居中の見守り・生活支援というソフト面の支援をセットにした、一段上の認定枠組みと理解すると整理しやすくなります。
大家が居住支援法人等と連携してサポート計画を作り、福祉事務所を設置する自治体の長(市区町村長等)から認定を受けます。
認定基準は国土交通省と厚生労働省の共管で、次の2種類があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| ソフト基準 | 連携先(居住支援法人・NPO法人・管理会社等)により、①日常の安否確認 ②訪問等による見守り・生活相談 ③心身や生活の状況が不安定になったときの福祉サービスへのつなぎ、を適切に行う体制があること |
| ハード基準 | 耐震性を有すること、一定の床面積(原則25㎡以上・既存住宅等は緩和あり)、台所・水洗便所・浴室等の基本設備があること |
サポートを行う者は居住支援法人に限られず、社会福祉法人・NPO法人・管理会社等でも可能です。
② 大家の賃貸リスクを下げる仕組みが入った
大家目線でいちばん効くのは、実はこちらです。
- 残置物処理が居住支援法人の業務に追加された:入居者の生前委託に基づき、死亡時の残置物処理・明渡しを居住支援法人が代行できるようになりました。孤独死後の残置物が放置されるリスクへの手当てです
- 認定家賃債務保証業者制度の創設:国土交通大臣が認定する保証業者が要配慮者の家賃保証を原則引き受け、住宅金融支援機構の保険と連動します
- 生活保護受給者の住宅扶助費の「代理納付」が原則化:自治体から大家の口座へ家賃が直接支払われるため、滞納リスクが大きく下がります
- 居住支援協議会の設置が努力義務化:市区町村レベルで住宅と福祉をつなぐ窓口の整備が進みます
大家が登録するメリット
制度に登録することで、大家側には次のようなメリットがあります。
- 空室を要配慮者向けの住宅として明示的に提供でき、入居希望者との接点が増える
- 一定の要件を満たす改修(バリアフリー化・間取り変更・耐震改修等)に対し、改修費の補助を受けられる
- 家賃を低く設定する場合に、家賃低廉化の補助を受けられる自治体がある
- 入居後のトラブル(家賃滞納・孤独死等の不安)について、居住支援法人・居住支援協議会による支援を受けられる
改修費補助
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 国(スマートウェルネス住宅等推進事業)または自治体 |
| 補助率 | 1/3(自治体の上乗せがある場合は最大2/3) |
| 補助限度額 | 1戸あたり基本額 最大62万円。工事内容により1戸125万円、車椅子対応等では最大250万円までの加算限度額の体系がある |
| 条件 | 原則10年間、専用住宅または居住サポート住宅として管理する義務がある |
家賃低廉化補助
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 地方公共団体(国と自治体が1/2ずつ負担)。制度を設けている自治体のみ |
| 補助限度額 | 月額 最大4万〜5万円/戸(うち国費が月額2万〜2.5万円)。低額所得者向け |
出典:(一財)住宅保証支援機構「セーフティネット住宅改修事業」/国土交通省(前掲)
注意したいのは「原則10年間の管理義務」です。 改修費の補助を受けると、その期間は専用住宅または居住サポート住宅として運用し続ける必要があります。数年で用途を変えたい物件には向きません。また家賃低廉化補助は実施していない自治体もあるため、所在自治体が実施しているかを先に確認してください。
外国人入居者との相性
外国人入居者を受け入れる大家にとって、この制度が特に有用なのは入居後の支援体制の部分です。
- 居住支援法人が、生活ルールの説明・トラブル発生時の通訳的な橋渡しなどを担うケースがある
- 家賃滞納リスクへの不安については、本制度の枠組みとは別に、外国人入居者の家賃滞納リスクと保証会社の使い方で扱った保証会社の活用と組み合わせるのが実務上の一般的な対応です
- 「保証人なし」を理由に外国人の入居を断ってきた大家にとって、制度上の支援体制が代替の安心材料になり得る
制度自体は国籍を問わず「住宅確保要配慮者」を対象にしていますが、外国人特有の懸念(言語・保証人・生活習慣の違い)に居住支援法人がどこまで対応できるかは、地域・法人によって差があるというのが実態に近い理解です。
登録・認定の流れ(一般的な枠組み)
- 賃貸住宅を都道府県・政令市・中核市に登録(専用のポータルサイトで検索可能になる)
- 要配慮者の入居を拒まない住宅として運用
- 一定の支援体制を備える場合、居住サポート住宅として認定を受ける
- 改修費補助・家賃低廉化補助等の支援メニューを活用(自治体による)
- 入居後、居住支援法人・居住支援協議会と連携
居住サポート住宅の認定手続き
- 大家が、居住支援法人・NPO法人・管理会社等のサポート実施者と契約・合意を結ぶ
- 居住安定援助計画認定申請書と添付書類を作成する(ポータルシステム上で電子的に作成できます)
- 物件所在地の福祉事務所設置自治体(市区町村等)の窓口に申請する
- 自治体の審査を経て認定・公示され、「居住サポート住宅情報提供システム」に掲載される
先に決めるのはサポートの連携先です。 見守りや福祉サービスへのつなぎを誰が担うかが決まらないと、認定基準のソフト面を満たせません。
よくある質問
Q. 登録すると、要配慮者以外の入居者を断らなければならなくなりますか? A. いいえ。登録住宅は「要配慮者の入居を拒まない」住宅であり、要配慮者以外の入居を制限するものではありません。
Q. 外国人だけを対象に登録することはできますか? A. できます。 登録の際に「入居を拒まない住宅確保要配慮者の範囲」を限定することが制度上認められています。たとえば「高齢者、低額所得者、被災者の入居は拒まない」といった形で登録できるため、「外国人」に絞った登録も可能です。一般の入居者も受け入れる登録住宅のほか、対象属性の要配慮者のみに限定する「専用住宅」としての登録もできます。
Q. 改修費補助を受けるハードルは高いですか? A. 補助の対象となる改修内容・補助率は自治体によって異なり、予算の制約もあります。まずは物件所在地の自治体窓口(住宅政策担当部署)に確認するのが確実です。
まとめ
- 住宅セーフティネット制度は、外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅を大家が登録する仕組み
- 改正法は2025年10月1日に施行済み。 「居住サポート住宅(法律上は居住安定援助賃貸住宅)」の認定制度が新設され、市区町村長等が認定する
- 大家に効くのは補助だけではない。残置物処理の法制化・認定家賃債務保証業者・住宅扶助費の代理納付の原則化が、賃貸リスクそのものを下げる
- 改修費補助は補助率1/3・1戸あたり基本額最大62万円。ただし原則10年間の管理義務が付く
- 家賃低廉化補助は実施していない自治体もある。所在自治体への確認が先
- 入居を拒まない要配慮者の範囲は限定して登録できる。 「外国人」に絞った登録も可能
- 外国人入居の保証人・家賃滞納リスクへの不安は、保証会社の活用と組み合わせるのが実務上の一般的な対応
外国人入居者の家賃滞納対策については「家賃滞納リスクと保証会社の使い方」、外国人賃貸の実務全般については「外国人賃貸完全ガイド」もあわせてご覧ください。


