「空き家を放っておいたら、固定資産税がいきなり6倍になるらしい」——そんな話を聞いて不安になった空き家オーナーの方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、この「6倍」は条件付きです。何もしていなくても自動的に6倍になるわけではなく、自治体から「勧告」を受けて初めて発生する仕組みになっています。この記事では、2023年に施行された空家法改正の内容と、「6倍」の正確な意味、そしてオーナーが今からできる対策を整理します。
※ 本記事の情報は2026年7月時点のものです。実際の運用基準や最新情報は各自治体の空き家担当窓口へ確認してください。
「管理不全空家等」とは何か
2023年12月13日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(令和五年法律第五十号)により、「管理不全空家等」という新しい区分が設けられました。
管理不全空家等とは、適切な管理が行われず、そのまま放置すれば「特定空家等」に該当するおそれのある空家等を指します。具体的には次のような状態です。
- 窓ガラスが割れたまま放置されている
- 外壁の一部が剥離している
- 敷地内の雑草が繁茂している
「特定空家等」が倒壊の危険性が迫っているような重度の状態を指すのに対し、管理不全空家等はその一歩手前・予備軍にあたる段階です。特定空家等になってからでは対策が遅く、周囲への被害も大きくなるため、早期の段階で行政の指導・勧告を可能にしたのがこの改正のポイントです。
「6倍」の仕組みを正確に理解する
ここが最も誤解されやすいポイントです。「固定資産税の総額が6倍になる」わけではありません。
正確には、次の順序で税負担が変わります。
- 住宅が建っている土地には、通常「住宅用地特例」という軽減措置があります(小規模住宅用地は固定資産税の課税標準額が1/6、都市計画税は1/3に軽減)。
- 管理不全空家等に対して自治体が指導を行い、改善されない場合、市町村長が「勧告」(空家法第13条第2項または第22条第2項)を行います。
- 勧告を受けた土地は、住宅用地特例の対象から除外されます。
除外されると、課税標準額は次のように変わります。
| 区分 | 固定資産税(課税標準額) | 都市計画税(課税標準額) |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(特例あり) | 価格の1/6 | 価格の1/3 |
| → 勧告後(特例除外) | 価格の満額(最大6倍) | 価格の満額(最大3倍) |
| 一般住宅用地(特例あり) | 価格の1/3 | 価格の2/3 |
| → 勧告後(特例除外) | 価格の満額(最大3倍) | 価格の満額(最大1.5倍) |
重要な前提が2つあります。
- この6倍・3倍は土地部分の課税標準額の話であり、建物にかかる固定資産税は対象外です。
- 実際には負担調整措置という緩和ルールがあるため、土地と建物を合わせた実際の合計税額の上昇幅は、多くの場合3〜4倍程度にとどまります。「支払う税金がそのまま6倍」という理解は正確ではありません。
管理不全空家に指定されるとどうなる(段階の流れ)
特例が外れるタイミングを正しく理解しておくことも重要です。
- 助言・指導:この段階では住宅用地特例は外れません。
- 勧告(空家法第13条第2項・第22条第2項):改善されない場合に行われ、この時点で初めて特例が除外されます。
- 命令・行政代執行:勧告後も改善されない場合の、さらに強い措置です。
なお、特例除外は賦課期日(毎年1月1日)時点で勧告を受けている場合、翌年度から適用されます。「指導を受けた=即座に税金が上がる」わけではなく、勧告まで改善すれば特例除外は避けられます。
空き家オーナーが今すぐできる対策
- 指導の段階で早めに対応する:勧告を受ける前に、窓の修繕・雑草の除去など基本的な管理を行えば、特例除外そのものを回避できます。
- 活用・売却・除却を検討する:使う予定のない空き家は、賃貸活用や売却、解体(除却)も選択肢に入れて早めに判断することが、結果的に税負担・管理負担の軽減につながります。
- 自治体の空き家相談窓口に相談する:管理不全空家等の具体的な指定基準や猶予期間は自治体ごとに運用が異なる部分があるため、早い段階で窓口に相談するのが確実です。
なぜ今、こうした制度が強化されているのか
背景には深刻化する空き家問題があります。総務省の住宅・土地統計調査(2023年調査・確報値)によると、全国の空き家数は900万2千戸(過去最多)、空き家率は13.8%(過去最高)に達しています。そのうち賃貸・売却用でも別荘でもない「その他の空き家」は385万6千戸で、前回調査から36.9万戸増加しました。
こうした「使われないまま放置される空き家」の増加を早期に食い止めるため、重度化する前の段階(管理不全空家等)で行政が関与できるようにしたのが今回の改正の狙いです。なお、2026年7月時点で新たな大規模改正はなく、2023年12月施行の制度の運用が定着してきている段階です。
よくある質問
Q1. 空き家を持っているだけで固定資産税が6倍になりますか?
A. いいえ。管理不全空家等として市町村長から「勧告」を受けた場合に限り、住宅用地特例が外れて課税標準額が上がります。指導の段階では影響しません。
Q2. 「6倍」とは支払う税金が実際に6倍になるということですか?
A. 正確には土地の固定資産税の課税標準額の話で、建物分は対象外です。また負担調整措置があるため、実際の合計税額の上昇幅は3〜4倍程度になるケースが一般的です。
Q3. 都市計画税も上がりますか?
A. はい。都市計画税も住宅用地特例の対象で、勧告により除外されると課税標準額が最大3倍(小規模住宅用地)または1.5倍(一般住宅用地)になります。
Q4. 勧告を受けた後でも改善すれば元に戻りますか?
A. 改善状況が確認され特例除外の要件に該当しなくなれば、翌年度以降の課税に反映される可能性があります。具体的な判断は自治体の運用によるため、窓口へ確認することをおすすめします。
まとめ
- 2023年12月施行の改正空家法により、「管理不全空家等」という新しい区分が新設された
- 固定資産税が上がるのは「指導」段階ではなく、「勧告」を受けた時点
- 「6倍」は土地の課税標準額の話であり、建物は対象外・負担調整措置により実際の税負担上昇は3〜4倍程度が一般的
- 空き家率は過去最高(13.8%)。放置せず、早めの管理・活用検討・自治体相談が最も有効な対策
最新の指定基準・運用は自治体ごとに異なる部分があるため、詳細は各自治体の空き家担当窓口でご確認ください。
Disclaimer
本記事は情報提供を目的としており、個別の税額や指定の判断を保証するものではありません。制度の運用は自治体により異なる場合があります。最新情報は国土交通省・総務省・お住まいの自治体の公式発表でご確認ください。執筆者はキム書士(行政書士試験 受験中・未登録)です。


