日本と韓国、同じ1億円で不動産を買うと何が違う?制度の違い6点【2026】

不動産

韓国で不動産を持っている人が日本の物件を見始めたとき、あるいはその逆のとき、最初に戸惑うのは価格ではありません。制度の作りがそもそも違うことです。

同じ「不動産を買う」でも、買った瞬間に払う費用も、持っている間に毎年出ていく税金も、貸したときに入ってくるお金の形も、売ったときの手取りも、日本と韓国では前提が変わります。税率だけを並べても比べたことにならないのは、このためです。

この記事では、1億円(≒10億ウォン)という同じ財布を日本と韓国のどちらに置くかで何が変わるのかを、まず制度の違い6点として整理します。金額の詳細は続く4本で1つずつ分解していきます。

この記事は2026年8月時点で公開されている各国の公的機関の情報をもとに整理した情報提供です。制度は改正されることがあり、実際の税額や手続きは物件・時期・個別の事情によって変わります。取引の前に必ず各国の公式情報および専門家の確認をお願いします。特定の投資を勧めるものではありません。

この記事で使う共通モデル

シリーズ5本を通して、次の前提を固定します。記事をまたいでも数字を突き合わせられるようにするためです。

項目日本韓国
投下資金1億円10億ウォン
物件東京23区の中古区分マンションソウル市内の中古アパート
使い方投資用(自分では住まない)投資用(自分では住まない)
買う人その国の非居住者その国の非居住者
保有期間5年5年
  • 換算は「1円 ≒ 10ウォン」で丸めています。計算を追いやすくするための概算で、実際の為替レートは日々変動します。
  • 自分では住まない前提にしているのは、日韓とも「自分が住む家」には大きな軽減措置があり、それを前提にすると投資の比較にならないためです。使えない側から見ておくほうが実用的です。
  • 保有期間を5年にしたのは、日本の譲渡所得税がちょうど5年で税率の線を引くからです。韓国側の年数区分とも比べやすくなります。

① そもそも買えるのか — 日本は制限がほぼなく、韓国は届出がいる

投資の話の前に、外国人が買えるのかという入口があります。

日本は、外国人・非居住者であることを理由とした不動産取得の制限が原則としてありません。日本人と同じように売買契約を結び、登記できます。相互主義(相手国が日本人に認めていなければ制限する)という考え方も一般には採られていません。

ただし例外があり、防衛関係施設や国境離島の周辺など、安全保障上重要とされた区域では、一定面積以上の土地・建物を取得する際に事前の届出が必要になります。都心のマンション投資で当たることはあまりありませんが、区域の指定は追加されていくため、購入前の確認対象ではあります。

韓国は、外国人が不動産を取得したときに取得後の届出が義務づけられています。売買で取得した場合は、契約締結日から30日以内の不動産取引申告を行うことで、外国人としての取得申告も済んだものとして扱われます(贈与など売買以外の契約による取得は60日以内)。怠ると過料の対象です。さらに、軍事施設保護区域や指定文化遺産の保護区域など特定の区域では、届出ではなく事前の許可が必要です。

根拠=不動産取引申告等に関する法律 第3条・第8条(2026年8月時点)。

日本韓国
国籍による取得制限原則なし原則なし(ただし届出義務あり)
通常のマンション取得手続き上の追加負担なし売買なら契約から30日以内の届出が必要
特別な区域一定区域で事前届出一定区域で事前許可

入口の重さは韓国のほうがわずかに上ですが、どちらも「外国人だから買えない」という制度ではありません。差が出るのはこの先です。

② 土地と建物の扱いが違う

日本の不動産で最初に説明が必要なのが、土地と建物が別々の不動産として扱われる点です。登記も別、評価も別、税金の計算も別に行われます。マンションの場合は、専有部分(建物)と敷地利用権(土地の持分)をセットで持つ形になります。

韓国のアパートも、土地の持分(敷地権)を建物の専有部分と一体で持つ点は似ています。ただし韓国では、土地と建物を切り離して別々に売買する場面が日本ほど日常的ではありません。日本では借地権付き建物のように、土地と建物の権利者が別であることが珍しくありません。

投資家にとって効いてくるのは次の2点です。

  1. 評価が分かれる — 日本では税金の計算のたびに土地部分と建物部分を分けて考えます。建物は年数で価値が下がり、土地は下がりません。減価償却の計算もここから出てきます。
  2. 古い建物の扱い — 日本の中古区分マンションは築年数によって建物価値がかなり削られますが、土地持分は残ります。この構造が、後の「売るときの税金」に効いてきます。

③ 登記は両国とも「信じただけでは守られない」

日本の登記事項証明書、韓国の登記事項全部証明書(通称 登記簿謄本)は、どちらも不動産の権利関係を公示する書類です。所有権を記録する欄と、抵当権など所有権以外の権利を記録する欄に分かれている点も共通しています。

そして重要な共通点がもうひとつあります。日韓とも、登記には公信力がありません。 登記の内容を信じて取引しただけでは、真の権利者に対抗できない場合があるということです。

つまりどちらの国でも、登記簿を見るのは出発点であって、それだけでは足りないという前提は同じです。日本側の読み方は登記事項証明書の読み方で詳しく整理しています。

④ 仲介手数料の決まり方が大きく違う — ここが一番の金額差

初期費用で最も体感差が出るのがここです。

日本は宅地建物取引業法に基づく上限があり、売買価格が400万円を超える部分については「売買価格 × 3% + 6万円(+消費税)」が上限です。実務ではこの上限額がそのまま請求されることが一般的です。

韓国上限料率が価格帯ごとに定められ、その範囲内で依頼人と仲介業者が協議して決めます。日本と違い、上限そのものが低く設定されているのが特徴です。

1億円/10億ウォンのモデルで並べると、次のようになります。

日本(1億円)韓国(10億ウォン)
決まり方法定上限=実質的な定額上限料率の範囲内で協議
上限の考え方3% + 6万円価格帯ごとの料率(10億ウォン帯は1%未満)
概算330万円超(税込)500万ウォン程度(=約50万円)

金額にすると数倍の開きが出ます。仲介手数料だけで、日本のほうが数百万円重いということです。ここは購入諸費用の記事で内訳まで分解します。

⚠️ 韓国の料率区分は改定されることがあり、また上限であって固定額ではありません。実際の負担額は交渉と契約内容によって変わります。

⑤ 貸したときに入るお金の形が違う — チョンセ(伝貰)という制度

このシリーズで一番大きい違いがこれです。

日本で不動産を貸すといえば、保証金(敷金)を預かって毎月家賃を受け取る形です。投資の言葉でいえば、毎月のインカムゲインが前提にあります。

韓国には、これとは別にチョンセ(伝貰)という賃貸の形があります。借主が物件価格の相当割合にあたる大きな保証金を貸主に預け、その代わり月々の賃料を払わないという契約です。貸主は預かった保証金を運用し、契約終了時に全額返します。

投資家の視点で言い換えると、こうなります。

チョンセで貸している間、家賃収入はゼロです。

貸主の収益は、預かった保証金を他でどう運用できるかにかかります。金利が高い局面では成立しますが、そうでなければ収益は物件価格の値上がりに依存することになります。

近年の韓国ではチョンセの比率が下がり、保証金と月額賃料を組み合わせるウォルセが増えています(韓国不動産院の統計では、ソウルのアパート賃貸借に占めるウォルセの比率が5割を超える水準で推移)。それでも、日本のように「家賃収入がある」ことが当然の前提になっている市場とは、収益の作り方が根本的に違います。

なお、チョンセをウォルセに切り替えるときの換算率には法定の上限(チョンセ・ウォルセ転換率)があり、「韓国銀行の基準金利 + 年2.0%」と「年10.0%」のうち低いほうと定められています。2026年8月時点の基準金利は2.75%なので、上限は4.75%です。保証金1億ウォンを月額賃料に振り替えても、年475万ウォン(月約40万ウォン)が上限という計算になります。保証金を家賃に読み替えても、日本の利回り感覚には届きにくいということです(根拠=住宅賃貸借保護法施行令 第9条)。

日本韓国
主流の形敷金 + 月額家賃チョンセ(保証金のみ・賃料なし)とウォルセ(保証金 + 賃料)
毎月の収入あるのが前提チョンセでは発生しない
収益の源泉家賃(インカム)保証金の運用益と価格の上昇(キャピタル)

ここから、シリーズ全体を貫く一文が出てきます。

日本の不動産投資はインカム型で、韓国の不動産投資はキャピタル型に寄っている。

同じ1億円を置いても、返ってくるお金の「形」が違うということです。詳しくは家賃収入の記事で計算します。

⑥ 税金のかけ方の思想が違う

税率の細部は続く3本で扱いますが、設計思想の違いだけ先に押さえておくと、個別の税率が理解しやすくなります。

日本は、保有している間に広く薄くかけます。 固定資産税と都市計画税が、物件の価格帯に関係なく毎年かかります。高額物件だけを狙い撃ちする保有税は基本的にありません。

韓国は、高額帯に集中してかけます。 毎年の財産税に加え、公示価格が一定の控除枠を超えた人にだけ総合不動産税がかかる二階建てです。控除枠の内側にいれば、保有コストは日本よりかなり軽くなります。

ここでこのシリーズの前提に直結する注意があります。よく紹介される「1世帯1住宅なら12億ウォンまで非課税」という控除枠は、韓国の居住者に限られた優遇です。本シリーズが前提にしている非居住者は、1件しか持っていなくても12億ウォンではなく9億ウォンの控除枠になります(総合不動産税法 第2条第3号・第8条)。「1世帯1住宅」を名乗れるのは居住者だけ、という線引きです。

そして売却時の設計も逆を向いています。 日本は保有5年を境に税率が下がる、比較的単純な二段構えです。韓国は保有期間が短いほど税率が跳ね上がり、1年未満の売却には極めて高い税率が設定されています。短期の売買そのものを抑え込む作りです。

日本韓国
買うとき取得税・登録免許税・印紙税が重なる取得税(+付加される地方税)
持っている間価格帯に関係なく毎年かかる一定額を超えた分に集中してかかる
売るとき5年を境に税率が下がる保有が短いほど懲罰的に高い
設計の思想広く薄く、長期保有を優遇高額帯と短期売買を狙い撃つ

まとめ:6つの違いを1枚で

#違い日本韓国
買えるか制限は原則なし制限は原則ないが届出が必要
土地と建物別個の不動産として扱う持分と一体で持つのが通常
登記公信力なし公信力なし(同じ)
仲介手数料3% + 6万円(上限=実質定額)上限料率が低く、協議
貸したとき月額家賃が前提チョンセでは家賃が発生しない
税金の思想広く薄く・長期優遇高額帯集中・短期に懲罰的

この6点を踏まえた上で、実際にいくらかかるのかを次の4本で分解します。

  1. 買うとき — 購入諸費用を1億円モデルで比較(取得税・仲介手数料・登記費用)
  2. 持っている間 — 固定資産税と財産税・総合不動産税
  3. 貸すとき — 家賃収入と課税、そしてチョンセで利回りが出ない理由
  4. 売るとき — 譲渡所得税と譲渡所得税、保有年数の線引き

最後の記事で、5年後に1億円がどうなっているかをモデルケースとして合流させます。

繰り返しになりますが、本シリーズは制度を並べて理解するための情報提供です。実際の税額は物件・時期・保有状況によって変わり、また制度自体も改正されます。実行の前には必ず最新の公式情報と専門家の確認をお願いします。


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