「見積りをもっと安くしてほしいと言われるけど、これって法律的に問題ないの?」「工期を短縮しろと言われて困っている」——建設業界の長年の課題だった労務費のダンピングと工期の無理な短縮に、国が正面から切り込む法改正が本格的に動き出しています。
2025年(令和7年)12月12日、改正建設業法・入契法(令和6年法律第49号)が完全施行されました。この記事では、何が変わったのかを実務目線で整理します。
※ 本記事の情報は2026年7月時点のものです。制度の運用は今後変更される場合があるため、最新情報は国土交通省の公式発表でご確認ください。
改正の背景
建設業界は著しい人手不足と高齢化に直面しています。中長期的に担い手を確保するため、これまでの「工期適正化(時間外労働削減)」に加えて、今回の改正では「労務費(適正な賃金原資)の確保」という新しい観点が加わりました。技能者に適正な賃金が支払われる仕組みを法律で後押しする、画期的な内容です。
改正建設業法の3つのポイント
① 労務費に関する基準の新設
中央建設業審議会が、技能者の適正な賃金水準を担保するための「労務費に関する基準」を作成・勧告する仕組みが新設されました。
- 元請・下請を問わず、「著しく低い労務費」での見積りや請負契約の締結を禁止(建設業法第19条の3等の改正)
- 発注者に対しても、基準を下回る労務費での見積り依頼を禁止し、違反した発注者には国土交通大臣等による「勧告・公表」が行われる
「価格競争のために労務費を削る」という従来のやり方が、法律上明確に問題視されるようになった点が最大の変化です。

② 工期ダンピング対策のさらなる強化
「著しく短い工期」での契約締結について、これまでは主に元請側の義務とされていましたが、改正後は下請(受注者)側にも禁止義務が明記されました。無理な短工期を受注者側が安易に受け入れることも問題視される形です。
③ 資材価格高騰への対応
資材価格が高騰した際の請負代金・工期の変更方法について、契約締結前にあらかじめ契約書(書面)に記載することが義務付けられました。契約前にリスク情報を提供し、誠実に協議することが求められます。「資材が値上がりしても契約時の金額のまま」というトラブルを防ぐ狙いです。
施行スケジュール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律名 | 改正建設業法・入契法(令和6年法律第49号) |
| 完全施行日 | 2025年(令和7年)12月12日 |
| 主な変更点 | 労務費基準の新設/工期ダンピング対策強化/資材高騰時の契約記載義務化 |
実務への影響(見積り・契約の現場で意識すべきこと)
- 見積書を作成する際:労務費を不当に切り詰めた金額で提出することは、今後は法令違反リスクとして扱われる可能性があります
- 発注者側の立場でも:基準を下回る労務費を前提に見積りを依頼すると、勧告・公表の対象になり得ます
- 契約書のひな形を見直す:資材価格高騰時の代金・工期変更ルールが契約書に明記されているか、既存のひな形を点検する必要があります
- 軽微な工事でも例外ではない:軽微な工事(許可不要のライン)であっても、労務費基準の適正化の対象外とは言えない点に注意が必要です
よくある質問
Q1. 「著しく低い労務費」の具体的な金額基準はありますか?
A. 中央建設業審議会が作成・勧告する「労務費に関する基準」に基づいて判断されます。具体的な運用の詳細は国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」で公表されている最新情報を確認してください。
Q2. すでに結んでいる契約にも今回の改正は適用されますか?
A. 施行日以降に新たに締結・更新する契約が主な対象となります。既存契約への遡及適用の有無は個別の契約内容によるため、不明な場合は専門家や国土交通省の窓口に確認することをおすすめします。
Q3. 違反した場合、どのような措置がとられますか?
A. 発注者が基準を下回る労務費での見積りを依頼した場合、国土交通大臣等による勧告・公表の対象となります。悪質な事案では、より重い行政指導・処分につながる可能性もあります。
Q4. 一人親方(個人事業主)にも関係がありますか?
A. はい。元請・下請の関係にある以上、契約規模を問わず労務費基準や工期に関するルールの適用対象になり得ます。自分が発注者・受注者いずれの立場でも内容を把握しておくことが望ましいです。
まとめ
2025年12月12日に完全施行された改正建設業法・入契法のポイントは次の3つです。
- 労務費に関する基準の新設:「著しく低い労務費」での見積り・契約締結を禁止。発注者側の違反には勧告・公表
- 工期ダンピング対策の強化:著しく短い工期の禁止義務が下請側にも拡大
- 資材高騰への対応:価格・工期の変更方法を契約書にあらかじめ記載することを義務化
見積書・契約書のひな形を今一度見直し、労務費・工期の設定が適正かどうかを点検することが重要です。建設業許可の要件と合わせて、実務の準備を進めておきましょう。
最新の運用・詳細は、国土交通省の公式発表で必ずご確認ください。
Disclaimer
本記事は情報提供を目的としており、法改正への対応を保証するものではありません。制度の運用は変更される場合があります。最新情報は国土交通省の公式発表でご確認ください。執筆者はキム書士(行政書士試験 受験中・未登録)です。
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