経営事項審査(経審)とは?公共工事に入るまでの流れと年1回の落とし穴【2026年版】

公共工事に参加するまでの4ステップ(建設業許可→決算変更届→経営事項審査→入札参加資格審査)を左から右に並べた図 kensetsu

※本記事は2026年8月時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。具体的な数値・期限・手続きは、許可を受けている行政庁および各自治体の最新の案内をご確認ください。

「建設業許可は取った。次は公共工事もやってみたい」——そう考えたときに、必ず出てくるのが経営事項審査(けいえいじこうしんさ)、通称経審(けいしん)です。

ところが実際に調べ始めると、こういう順で戸惑う方が多いはずです。

  • 許可を取っただけでは公共工事に入れないらしい
  • 「決算変更届」というものを先に出さないといけないらしい
  • 経審を受けても、まだ入札には参加できないらしい
  • しかも毎年やるらしい

この記事では、公共工事に参加できるようになるまでの順序と、毎年つまずきやすいポイントを、手続きの流れに沿って整理します。


まず結論:公共工事に入るには「3つ」を順番に通す

建設業許可を持っているだけでは、公共工事の入札には参加できません。次の順序を通る必要があります。

順序手続き誰に出すかひとことで言うと
決算変更届(事業年度終了届)許可行政庁1年間の成績表を出す
経営事項審査(経審)許可行政庁+登録経営状況分析機関会社を点数化してもらう
入札参加資格審査発注者(国・都道府県・市町村など)ごとその発注者の名簿に載せてもらう

この3つは、順番を飛ばせません。

とくに見落とされやすいのがです。決算変更届が出ていないと、そもそも経審を受け付けてもらえません。「経審の準備をしよう」と思って窓口に相談したら、過去数年分の決算変更届が未提出だと判明して、そこから作業が始まった——という話は珍しくありません。

そしては、経審とは別の手続きです。★経審は「点数をつけてもらう」ところまでで、入札に参加する資格そのものではありません。点数を持って、工事を発注する自治体などに改めて申請して、初めて名簿に載ります。

建設業許可そのものについては、許可がいらない「軽微な工事」とは?500万円ラインを徹底解説 もあわせてご覧ください。


経営事項審査とは何か

経営事項審査は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です。建設業法第27条の23第1項に根拠があります。

公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。

目的は、発注者側から見ると分かりやすくなります。

税金で行う工事を任せる相手が、途中で倒れない会社か、その工事をやり切る力があるかを、発注者が一社一社ゼロから調べるのは現実的ではありません。そこで共通のものさしで点数化しておき、発注者はその点数を見て判断する——これが経審です。

★ つまり経審は、業者を落とすための試験ではなく、比較できるようにするための仕組みです。


何を審査されるのか

経審では、会社をいくつかの側面から評価し、最終的に総合評定値(P)という1つの点数にまとめます。評価項目は次のように分かれています。

記号何を見るか
X1工事の完成工事高(どれくらいの規模の工事をこなしてきたか)
X2自己資本額平均利益額(経営の体力)
Y経営状況(財務内容の健全性)
Z技術力(技術職員の数、元請としての完成工事高)
Wその他の審査項目(社会性等)(労働福祉の状況、法令遵守、建設機械の保有 など)

ここで押さえておきたいのは、★「売上が大きいほど有利」という単純な仕組みではないということです。技術者を何人抱えているか、社会保険にきちんと加入しているか、といった日常の経営のあり方が点数に入ってきます。

★★ W(社会性等)は、経審を意識して初めて「点になる」と分かる項目が多い部分です。すでにやっていることが加点対象だったのに申告していなかった、というケースもあります。


手続きは「2段構え」になっている

経審は、1か所に申請して終わりではありません。2つの窓口を順に通ります。

段階何をするかどこへ
1段目経営状況分析(上の表の Y登録経営状況分析機関(民間の登録機関)
2段目経営規模等評価総合評定値の請求許可行政庁(都道府県知事 or 国土交通大臣)

建設業法第27条の24第1項が、経営状況分析を登録経営状況分析機関が行うと定めています。

前条第二項第一号に掲げる事項の分析(以下「経営状況分析」という。)については、…国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録経営状況分析機関」という。)が行うものとする。

1段目の結果(経営状況分析結果通知書)が出ていないと、2段目に進めません。ここでも順序があります。

「経審を受けよう」と決めてから逆算すると、決算変更届 → 経営状況分析 → 経営規模等評価 と、3つの手続きを順に通すことになります。それぞれに書類の準備期間があるので、思っているより時間がかかります。


「審査基準日」という考え方

経審でよく出てくるのが審査基準日という言葉です。

これは「いつ時点の会社を審査するのか」を決める日で、原則として直前の事業年度終了の日、つまり決算日です(個人事業主の場合は直前の年の12月31日)。

※ 審査基準日という用語は法律の条文ではなく、経営事項審査の項目・基準を定める告示で用いられています。

★ ここが重要で、申請した日の会社の状態を見るのではありません。決算日時点の数字で審査されます。

だからこそ、点数を上げたいなら決算日より前に手を打つ必要があります。決算が終わってから「技術者を増やそう」「社会保険に入ろう」としても、その決算に基づく経審には反映されません。反映されるのは翌年です。

★★ 経審は「終わってから対策する」ものではなく、「決算前に設計する」もの、というのが実務上の感覚です。


有効期間 ── なぜ毎年受けるのか

よく「経審の有効期間は1年7か月」と言われます。根拠は建設業法施行規則第18条の2です。

法第二十七条の二十三第一項の建設業者は、同項の建設工事について発注者と請負契約を締結する日の一年七月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない。

★ 条文の書き方は「通知書が1年7か月で失効する」ではなく、「契約日から1年7か月さかのぼった日の直後の決算日以降の経審を受けていること」という条件の形です。結果として、審査基準日から約1年7か月が実務上の期限として機能します。

事業年度は1年で回ります。1年7か月という長さは、決算日から経審の結果が出るまでの期間を見込んだ余裕にあたります。裏を返すと、この余裕を使い切ると次が間に合いません。期限が切れると、その間は公共工事を発注者から直接請け負えなくなります。

★ だから経審は、取ったら終わりではなく、決算のたびに回し続ける手続きになります。

ここが、建設業許可(更新まで数年の間隔がある)との大きな違いです。

頻度
建設業許可の更新数年に一度
決算変更届毎年(毎事業年度経過後4か月以内・建設業法11条2項)
経営事項審査毎年(公共工事を続ける場合)

いつ動き始めればよいか

「決算が終わったら経審」と考えていると、たいてい間に合いません。

理由は、手続きが直列に3つ並んでいるからです。

“` 決算確定 ↓ 決算変更届の作成・提出 ← 毎事業年度経過後 4か月以内(建設業法11条2項) ↓ 経営状況分析の申請 → 結果通知 (分析機関の処理期間) ↓ 経営規模等評価の申請 → 結果通知 ← 行政庁の標準処理期間(自治体により異なる) ↓ 入札参加資格審査の申請 (発注者ごとの受付時期に左右される) “`

★★ そして最後の入札参加資格審査には、発注者ごとに「受付時期」があります。多くの自治体で定期受付の時期が決まっており、そこを逃すと随時受付を待つか、次の定期受付まで空くことがあります。随時受付を設けていない発注者もありますので、必ず個別に確認してください。

経審が間に合っても、名簿に載る時期を逃せば結局その年は入れない——この構造が、逆算を必要にしています。


よくある3つのつまずき

① 決算変更届が何年分もたまっている

いちばん多いパターンです。決算変更届は許可を持っている限り毎年必要で、公共工事をやるかどうかとは関係ありません。

未提出のまま何年か経つと、経審の前にその分をすべて出すことになります。過去の決算書類を揃え直す作業が発生するため、ここで数か月かかることがあります。

「今年から公共工事をやりたい」と思った時点で、まず確認すべきは決算変更届の提出状況です。

② 決算後に対策しようとする

前述のとおり、審査の対象は決算日時点です。決算が締まった後にできることは限られます。

点数を意識するなら、動くのは決算日より前です。

③ 経審が終われば入札できると思っている

経審は点数をもらうところまでです。入札に参加するには、工事を発注する自治体等ごとに、別途申請して名簿に載せてもらう必要があります。

★★ 国、県、市で、それぞれ別の手続きになります。「県の名簿には載っているが、市の名簿には載っていない」という状態は普通に起こります。


下請でも経審は要るのか

経営事項審査が義務になるのは、「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを、発注者から<u>直接</u>請け負おうとする建設業者」です(建設業法27条の23第1項)。

つまり法律上は、元請として直接受注する場合に必要で、下請として入る場合には義務づけられていません。

★ ただし実務では、元請企業が下請の選定基準として経審の点数を求めることがあります。「法律上は不要でも、取引上は必要」という場面はありえます。

自社が今後どちらを目指すのかによって、経審を受ける必要性そのものが変わります。「公共工事に関わる=必ず経審」ではないという点は、最初に整理しておくとよい部分です。


2026年に気をつけること

経審の評価項目は、建設業をめぐる政策の方向性に合わせて見直されてきました

その方向性は、条文の並び順にも表れています。建設業法施行規則第18条の3は、審査される「客観的事項」を次の順で挙げています。

一 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況

二 建設業の営業継続の状況

三 法令遵守の状況

四 建設業の経理に関する状況

「担い手の育成及び確保」が第一号に置かれています。人材の確保・育成に関する取組が、経審で評価される項目として明確に位置づけられているということです。

★★ 経審の具体的な配点は、法律ではなく国土交通大臣の告示で定められ、見直しが入ります(建設業法27条の23第3項)。数年前の解説記事をもとに準備すると、加点できるはずの項目を取りこぼすことがあります。

その年の告示と、許可行政庁が出している最新の手引きを必ず確認してください。

なお、2026年は建設業法そのものにも改正の動きがあります。あわせて 改正建設業法で何が変わる?「労務費基準」義務化と工期ルール もご確認ください。


まとめ

  • 公共工事に入るには ①決算変更届 → ②経営事項審査 → ③入札参加資格審査 の順に通す。順番は飛ばせない
  • 経審は 経営状況分析(登録機関)→ 経営規模等評価(許可行政庁)2段構え
  • 審査されるのは決算日(審査基準日)時点の会社。★対策は決算日より前
  • 「1年7か月」(施行規則18条の2)を切らさないよう、公共工事を続けるなら毎年回し続ける
  • 経審=入札参加資格ではない。名簿登録は発注者ごとに別手続き
  • 最初に確認すべきは、決算変更届がたまっていないか

公共工事は、手続きの順序と時期を逆算できているかどうかで、実際に入れる年が1年変わります。まずは自社の決算日から逆算して、いつ何を出すのかを一度書き出してみることをおすすめします。


※本記事は公表情報にもとづく一般的な情報提供です。個別の手続き・要件・期限の判断については、許可を受けている行政庁および工事の発注者の最新の案内をご確認ください。

参考:

  • 建設業法(e-Gov法令検索)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100
  • 国土交通省「建設業の許可・経営事項審査」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr1_000001_00088.html
  • 東京都都市整備局「経営事項審査」https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/keiei_01.html

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