キャリアアップ助成金とは?正社員化コースは外国人雇用にも使えるか【2026年8月版】

キャリアアップ助成金・正社員化コースの対象(有期雇用から正社員への転換)と助成金・補助金の違いを示す図 Support(事業支援)

※本記事の情報は2026年8月時点で一般に公開されている制度の枠組みに基づく情報提供です。支給額・支給要件・在留資格ごとの取り扱いは、厚生労働省の公式パンフレット・支給要領で必ずご確認ください。

〈使える補助金シリーズ〉① まとめ → ② ものづくり補助金 → ③ 小規模事業者持続化補助金 → ④ キャリアアップ助成金 ←今ここ

このシリーズでは①〜③まで「補助金」を扱ってきましたが、今回取り上げるキャリアアップ助成金は「助成金」です。名前が似ていても、実は仕組みが根本的に違います。そしてこの助成金は、非正規雇用者を抱える企業なら業種を問わず対象になり得るため、これまでの3本柱(ビザ・不動産・補助金)を横断させて紹介する記事です。

「いくらもらえるのか」「うちの有期雇用スタッフは対象か」「何をいつまでにやればよいのか」を順に見ていきます。


まず区別する:助成金と補助金は別物

シリーズ①〜③で扱った「補助金」と、今回の「助成金」は、しばしば混同されますが仕組みが異なります。

補助金助成金
採否審査による採択制(不採択があり得る)要件を満たせば原則支給
財源・所管主に経済産業省・中小企業庁系主に厚生労働省
主な目的設備投資・新規事業等雇用の安定・処遇改善

キャリアアップ助成金は、要件を満たしていれば不採択になりにくい(審査で競わされるものではない)という点が、これまでの3本と根本的に違います。この違いを理解しておくと、「補助金が不採択でも、助成金は使えないか」という発想の切り替えができます。


キャリアアップ助成金・正社員化コースとは

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者など、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成金です。複数のコースがありますが、最も利用されているのが正社員化コースです。

正社員化コースは、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換した事業主に対して助成するものです。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」(『キャリアアップ助成金のご案内』令和8年度版・2026年4月改訂)


支給額の目安

転換前の雇用形態転換後中小企業大企業
有期雇用正規雇用80万円(40万円×2期)60万円(30万円×2期)
無期雇用正規雇用40万円(20万円×2期)30万円(15万円×2期)

いずれも対象労働者1人あたりの金額です。1年度・1事業所あたり20人まで申請できます。

支給が2期に分かれているのは、転換後の雇用が実際に続いていることを確認しながら支給する設計だからです。転換した時点で全額が出るわけではありません。

なお中小企業・大企業の区分は、資本金または常時雇用する労働者数で決まります。

業種資本金または労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他(製造・建設等)3億円以下300人以下

かつては有期→正規(中小企業)で「1人あたり57万円」でしたが、現行は最大80万円に拡充されています。古い解説記事の金額を見ている場合は注意してください。


主な支給要件

正社員化コースの支給を受けるには、概ね次のような要件を満たす必要があります。

  • 転換前に、対象労働者を通算6か月以上雇用していること
  • キャリアアップ計画を転換日の前日までに作成し、管轄の労働局長の認定を受けていること
  • 就業規則等に正規雇用労働者への転換制度を規定していること
  • 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間と比較して3%以上増額させていること
  • 転換後6か月分の賃金を通常どおり支給し、その支給日の翌日から2か月以内に支給申請すること

これらの数値要件(6か月・3%)は、令和8年度も変わっていません。

「キャリアアップ計画を事前に作っていない」というのが、支給要件を満たせない最も多い原因とされています。転換してから助成金の存在に気づいた場合、事前提出の要件を満たせず対象外になるため、正社員化を検討している段階で計画を出しておくことが重要です。


外国人雇用との接続:在留資格の種類で変わる論点

ここが、この記事をビザ柱・補助金柱の横断記事として書いている理由です。

外国人従業員を有期雇用契約で雇っている企業が「正社員化コースを使いたい」と考えたとき、在留資格の種類によって対象になるかどうかが分かれます。 ここを取り違えると、計画を立てた後で対象外だったと判明することになります。

在留資格正社員化コース考え方
技術・人文知識・国際業務(技人国)在留期間の更新が可能で、長期・無期雇用になじむ
高度専門職・企業内転勤等の就労系同上
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者就労制限のない身分系の在留資格
特定技能2号在留期間の更新に上限がなく、長期雇用が可能
特定技能1号×通算在留期間が最長5年に制限されており、帰国が前提とされているため
技能実習×母国への技術移転と実習後の帰国を前提とする制度のため
留学・家族滞在×資格外活動による就労。卒業後に就労資格へ変更して採用する場合は新規採用扱いになり、転換ではない

特に注意が要るのが特定技能1号です。 現場で人数が多く、有期雇用契約で雇っているため「正社員にすれば助成金が出るのでは」と考えられがちですが、厚生労働省のQ&Aでは帰国が前提の在留資格として対象外と整理されています。

あわせて、外国人・日本人を問わない共通の要件として、対象労働者が雇用保険の被保険者であること、適法な就労であることが必要です。

⚠️ 在留資格別の可否は、助成金(厚生労働省)と在留資格(出入国在留管理庁)の両方にまたがる論点です。自社のケースを最終的に判断するのは管轄の労働局なので、計画を立てる前に確認してください。

特定技能の在留資格そのものについては「特定技能の対象分野」「特定技能1号・2号の違い」で解説しています。


申請の流れ

  1. キャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局に提出・認定を受ける
  2. 就業規則等に正社員転換制度を規定
  3. 対象労働者を正規雇用労働者に転換
  4. 転換後6か月分の賃金を支払う
  5. 支給申請(転換後6か月経過後、一定期間内に申請)

提出先は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(または労働局が指定するハローワーク・助成金事務センター)です。「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請もできます。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金 支給申請の手引き(正社員化コース・令和8年度版)


よくある質問

Q. 派遣労働者を直接雇用の正社員にした場合も対象ですか? A. 派遣労働者を無期雇用の正社員として直接雇用した場合を対象とする枠組みが設けられてきました。派遣元・派遣先どちらの手続きになるかなど、通常の有期雇用からの転換とは要件が異なる部分があります。個別要件は最新の支給要領で確認が必要です。

Q. 転換後すぐに退職してしまったらどうなりますか? A. 支給要件は転換後一定期間の雇用継続・賃金支払いの実績を前提としているため、早期に退職した場合は支給要件を満たさなくなる可能性があります。

Q. 助成金と補助金は同時に申請できますか? A. 助成金(厚生労働省系)と補助金(経済産業省系)は制度の性質が異なるため、要件を満たせばそれぞれ別に申請すること自体は可能です。ただし対象経費・対象人員が重複する場合は、各制度の重複受給に関する規定を個別に確認してください。


まとめ

  • 助成金=要件を満たせば原則支給/補助金=審査による採択制。この違いをまず押さえる
  • 正社員化コースは、有期雇用等から正規雇用への転換を支援する助成金。中小企業なら有期→正規で1人あたり80万円(40万円×2期)
  • 支給には事前のキャリアアップ計画提出が必須。転換後に気づいても間に合わない
  • 在留資格で対象・対象外が分かれる。 技人国・特定技能2号・身分系は対象、特定技能1号と技能実習は対象外
  • 転換後6か月の賃金を3%以上増額させる要件がある。人数は1年度1事業所あたり20人まで

このシリーズはここでいったん完結です。制度全体は「2026年に中小企業が使える補助金・助成金まとめ」で一覧にしています。外国人雇用の在留資格については「特定技能の対象分野」もあわせてご覧ください。


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