売るときの税金を日韓で比較|保有年数で変わる線引きと非居住者の税率【2026】

不動産

シリーズ最終回です。買うとき、持っている間、貸すときを見てきました。最後は売るときです。

そして日本と韓国は、ここでも逆方向を向いています。日本は「長く持てば安くなる」、韓国は「短く売ると極端に高い」。 同じ長期保有の誘導でも、アメとムチが逆です。

最後に、RK2からRK4までの数字を合流させて、5年後に1億円がどうなっているかをモデルで出します。

この記事は2026年8月時点の公的情報をもとにした情報提供です。金額はすべて条件を固定したモデルケースであり、実際の税額・価格・為替を保証するものではありません。どちらの国の不動産が有利かを示すものではなく、特定の投資を勧めるものでもありません。

日本:5年を境に税率が半分近くになる

日本の譲渡所得税は、保有期間で二段構えです。

保有期間一般的な税率非居住者の場合
5年以下(短期)39.63%30.63%
5年超(長期)20.315%15.315%

非居住者の税率が低いのは、住民税が課されないためです。住民税は1月1日時点の住所地で課税されるため、日本に住所がなければ対象になりません。所得税と復興特別所得税だけが残ります。

「5年」の数え方に落とし穴がある

ここが実務で最も間違えやすい点です。

短期と長期の判定は、売った年の1月1日時点で保有期間が5年を超えているかで決まります。

つまり、2021年6月に買った物件を2026年7月に売ると、実際の保有期間は5年1か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期扱いです。長期にするには2027年まで待つ必要があります。

モデルでは税額が倍近く変わるため、数か月の差で数十万円が動きます。

非居住者が売ると、代金の10.21%が先に引かれる

非居住者から不動産を買った買主には、売買代金の10.21%を源泉徴収して納付する義務があります。売主の手元には残りしか入りません。

ただし除外要件があり、譲渡対価が1億円以下で、かつ買主が個人で自分または親族の住まいにする場合は源泉徴収されません。

これも賃料と同じで、税額が増えるのではなく前払いになるだけです。確定申告で精算し、納めすぎていれば還付されます。とはいえ1億円の物件なら1,000万円超が一時的に拘束されるため、次の物件の資金計画には直接効いてきます。

韓国:短く売ると懲罰的に高い

韓国の譲渡所得税は、保有期間が短いほど税率が跳ね上がります。

保有期間税率(住宅)
1年未満70%
1年以上2年未満60%
2年以上基本税率(6〜45%の累進)

1年未満は70%です。 さらに地方所得税が本税の10%として別途かかります。短期売買そのものを成立させないための設計です。

日本の短期税率が39.63%(非居住者は30.63%)であることを考えると、韓国の短期売却は日本の倍近い負担になります。

長く持つと控除が増える

一方、長く持つと長期保有特別控除が効きます。保有3年以上から年数に応じて譲渡益が控除されます。

ここで注意が必要なのは、この控除には2種類あり、額が大きく違うことです。

対象控除率
一般の控除(一般表)投資用を含むすべて3年6%から年2%・上限30%
1世帯1住宅の特例(1世帯1住宅表)居住者が要件を満たす場合保有+居住で最大80%

よく「韓国は長期保有なら最大80%も控除される」と紹介されますが、80%のほうは居住者向けの特例です。本シリーズの前提である非居住者が使えるのは、一般の年2%・上限30%のほうになります。5年保有なら10%です。

日本の「税率そのものが下がる」方式に対し、韓国は「課税される利益を減らす」方式です。同じ長期保有の優遇でも、効かせ方が違います。

売るときの非課税は、非居住者には届かない

韓国には、居住者が要件を満たす1件の住宅を売る場合に譲渡益が非課税になる制度があります(1世帯1住宅非課税)。金額の上限も12億ウォンと高く設定されています。

しかしこれは居住者向けの制度です。 非居住者が韓国に1件だけ持っていても、この非課税は使えません。第3回の総合不動産税と同じ構図です。

整理すると、非居住者が使えるのは「一般の長期保有控除(上限30%)」まで。12億ウォンの非課税と最大80%の控除は、どちらも居住者の枠です。なお第4回で見たとおり、賃貸所得の1住宅非課税は非居住者にも適用されます。「居住者限定」かどうかは制度ごとに違うので、まとめて判断できません。

多住宅者への重課について(2026年8月時点)

韓国では調整対象地域の多住宅者に対する譲渡所得税の重課(2住宅 +20%p・3住宅 +30%p)が長く猶予されてきましたが、この猶予は2026年5月9日で期限を迎えました。 その後、段階的に緩和する税制改正案が示されている状況です。

本記事のモデルは1件のみの保有なので重課の対象外であり、上の計算に影響はありません。ただし2件目以降を持つ場合は前提がまったく変わります。 韓国側でこの分野は動きが速く、売却を検討する時点での確認が必須です。

モデルで計算する

前提:5年強保有し、10%値上がりしたところで売る。

日本韓国
買った価格1億円10億ウォン
売った価格1億1,000万円11億ウォン
保有5年超(長期扱いになる年に売却)5年
保有者非居住者・1件のみ非居住者・1件のみ

日本の税額

項目金額
譲渡価額1億1,000万円
▲ 取得費(購入価格+購入時諸費用)1億592万円
+ 減価償却累計額の戻し311万円
▲ 譲渡費用(仲介手数料・印紙税)373万円
譲渡所得約346万円
税額(長期・非居住者 15.315%)約53万円

※もし1年待たずに売って短期扱いになると、税額は約106万円になります。

韓国の税額

項目金額
譲渡価額11億ウォン
▲ 取得価額(購入価格+取得税等)10億3,400万ウォン
▲ 必要経費(譲渡時の仲介報酬等)605万ウォン
譲渡差益約6,000万ウォン
▲ 長期保有特別控除(5年・10%)600万ウォン
▲ 基礎控除250万ウォン
課税標準約5,150万ウォン
譲渡所得税(基本税率)約660万ウォン
+ 地方所得税(10%)約66万ウォン
合計約726万ウォン(≒約73万円)

※もし1年未満で売っていれば、譲渡差益6,000万ウォンに70%が適用され、4,000万ウォン超になります。5倍以上です。

韓国側にも源泉徴収がある — ただし買主が法人のときだけ

日本では買主が個人でも法人でも原則10.21%を源泉徴収しますが、韓国は買主の属性で扱いが変わります。

買主扱い
法人買主が売買代金の10%(または譲渡差益の20%のうち少ないほう)を源泉徴収して納付
個人源泉徴収なし。売主が自分で予定申告・納付する

個人が買主なら源泉徴収されない代わりに、売主(非居住者)が残金決済日の属する月の末日から2か月以内に管轄税務署へ予定申告・納付を行う義務を負います。「引かれないから後で払えばいい」ではなく、期限が短いということです(所得税法 第156条)。

なぜ課税される利益に差が出るのか

同じ10%の値上がりなのに、課税対象の利益は日本346万円/韓国6,000万ウォン(≒600万円)と、日本のほうがかなり小さくなっています。

理由は単純です。日本は取引コストが高いぶん、それが取得費と譲渡費用として利益から差し引かれるからです。

税金だけを見れば日本が軽く見えますが、それは先に費用として出ていったお金の分です。次の節で往復の総額を見ます。

往復の取引コストが決定的に効く

第2回で買うときの費用を出しました。売るときの費用も足すと、こうなります。

日本(1億円)韓国(10億ウォン)
買うときの諸費用約620万円約4,150万ウォン
売るときの仲介手数料等約373万円約605万ウォン
往復の取引コスト約993万円約4,755万ウォン(≒約476万円)
物件価格に対する比率約10%約4.8%

日本の不動産は、買って売るだけで物件価格の約10%が消えます。

これが意味することは重いです。1億円の物件は、10%値上がりしてようやく元が取れるということです。韓国は約4.8%なので、より小さい値上がりで元が取れます。

差の主因は第2回で見たとおり仲介手数料です。日本は買うときも売るときも3%+6万円がかかります。

5年後の合流:1億円はどうなっているか

シリーズの数字を全部足します。「同じ10%の値上がり」を仮定した場合の、5年間のモデル集計です。

日本韓国(チョンセで貸した場合)韓国(ウォルセで貸した場合)
投下額(物件+購入諸費用)1億620万円10億4,150万ウォン10億4,150万ウォン
売却代金1億1,000万円11億ウォン11億ウォン
▲ 売却時の費用・譲渡税426万円1,331万ウォン1,331万ウォン
売買だけの損益▲46万円+4,519万ウォン+4,519万ウォン
+ 5年間の賃貸手取り(税引前)+1,210万円+7,325万ウォン+1億2,325万ウォン
合計+1,164万円+1億1,844万ウォン(≒約1,184万円)+1億6,844万ウォン(≒約1,684万円)
投下額に対して約+11.0%約+11.4%約+16.2%

この表から読み取れること

① 日本は、10%の値上がりでは売買単体が赤字になる。 往復の取引コストが約993万円あるため、1,000万円の値上がりはほぼ相殺されます。日本の不動産投資が家賃収入を前提にしているのは、この構造によると言えます。

② 韓国のチョンセは、日本とほぼ同じ結果になる。 賃料が入らない代わりに取引コストと保有税が軽く、結果として近い水準に落ち着きます。同じ数字にたどり着く経路がまったく違うということです。

③ ウォルセで貸せた場合が最も大きい。 ただしこれは「月貰で貸せた場合」の話であり、物件がその市場に乗っているかは選べません。

⚠️ この表を読むときの注意

この集計は「日韓の不動産が同じ10%だけ値上がりする」という仮定の上に立っています。実際の値動きは国・エリア・時期によってまったく異なり、下落することもあります。

前提を変えれば、順位は簡単に入れ替わります。

  • 値上がり率が違えば結果は逆転する(韓国は取引コストが軽いぶん、値動きの影響を素直に受けます)
  • 賃貸収入にかかる所得税を差し引いていません。 そしてこれは日本側に不利に効きます。日本の賃貸所得は課税されますが、韓国側は本モデルの条件(国内1件のみ・基準時価12億ウォン以下)では非課税だからです(第4回)。税引後で見れば、日本の+11.0%はさらに下がります
  • 為替を含めていません(次節)
  • 空室・修繕・金利は簡略化しています

この表は「どちらが儲かるか」を示すものではなく、「どこにお金が消えるかの構造が違う」ことを示すためのものです。

為替という、もう一つの変数

非居住者として外国の不動産を持つ以上、為替が損益に直接入ってきます。

韓国の物件を日本円で評価する場合、ウォン建てで利益が出ていても、円高ウォン安が進めば円換算では目減りします。逆も同じです。物件そのものの値動きとは無関係に、手取りが変わります。

そして厄介なのは、為替の影響が保有期間中ずっと効き続けることです。賃料も、売却代金も、すべて換算を通ります。

本シリーズでは「1円 ≒ 10ウォン」という固定レートで計算してきましたが、実際にはこの前提自体が動きます。 上の集計表の数字は、その意味でも幅を持って読む必要があります。

まとめ

  • 日本は保有5年で税率が下がる。非居住者は住民税がないため、短期30.63%・長期15.315%
  • 「5年」は売った年の1月1日で判定する。 数か月の差で税額が倍になり得る
  • 韓国は保有1年未満が70%という懲罰的な税率。長期保有は長期保有特別控除で優遇する方式
  • 韓国の非課税制度は、使えるものと使えないものが分かれる。 売却時の1世帯1住宅非課税・最大80%の長期保有特別控除は居住者限定で使えないが、賃貸所得の1住宅非課税は非居住者にも適用される。「非居住者だから全部ダメ」ではない
  • 非居住者が日本の物件を売ると代金の10.21%が源泉徴収される(1億円以下かつ個人の居住用は除く)
  • 往復の取引コストは日本が約10%、韓国が約4.8%。 ここがモデル全体で最も効く
  • モデル集計(同じ10%値上がりを仮定)では日本+11.0%/韓国 チョンセ+11.4%/韓国 ウォルセ+16.2%
  • ただし前提を変えれば順位は入れ替わる。 値上がり率・賃貸所得税・為替は含めていない

シリーズ全5回

  1. 制度の違い6点(総論)
  2. 買うとき — 購入諸費用
  3. 持っている間 — 保有税
  4. 貸すとき — 家賃収入とチョンセ
  5. 売るとき — 譲渡所得税(本記事)

同じ金額を置いても、お金が入る形も、消える場所も、国によってまったく違います。 税率を並べるだけでは見えてこないのは、この「構造」の部分です。

本記事の金額はすべてモデルケースです。実際の税額・価格・為替は条件によって変わり、制度も改正されます。実行の前には必ず最新の公式情報と専門家の確認をお願いします。本記事は特定の投資を勧めるものではありません。


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