在留資格の変更許可が下りると、つい「手続きは終わった」と思いがちです。しかし、許可はゴールではなく、その後にいくつかの届出が必要になることがあります。しかも、その一部は本人ではなく“会社”がやらなければならない義務で、外国人の雇用が初めての会社ほど見落とされがちです。
この記事では、在留資格を変更した後に必要な届出を、「本人がするもの」と「会社がするもの」に分けて整理します。
届出は「本人がするもの」と「会社がするもの」に分かれる
まず全体像です。変更後の届出は、大きく次のように分かれます。
| 誰が | 何を | どこへ | いつ |
|---|---|---|---|
| 本人 | 契約機関に関する届出(就労資格の場合) | 出入国在留管理庁 | 変更等から14日以内 |
| 本人 | 配偶者に関する届出(離婚・死別した場合) | 出入国在留管理庁 | 事由から14日以内 |
| 会社 | 外国人雇用状況届出 | ハローワーク | 雇入れ・離職の翌月(詳細は後述) |
| 本人/会社 | 社会保険・国保・国民年金の確認 | 勤務先/市区町村 | 変更事由が生じたとき |
「どの届出が必要か」は、変更“後”の在留資格が何かで変わります。順に見ていきます。
【本人】入管への届出は「変更先の資格」で変わる
- 就労資格へ変更した場合(技術・人文知識・国際業務、特定技能 など):勤務先が「契約機関」にあたるため、契約機関の変更・名称変更・契約終了・新たな契約の締結などがあったときは、入管法19条の16に基づき14日以内に届け出る対象になります。
- 身分系へ変更した場合(日本人の配偶者等、永住者、定住者 など):これらは活動に基づく資格ではないため、契約機関・活動機関に関する届出の対象外になります。以後、勤務先を変えても入管への機関届出は不要です。
- 配偶者としての在留資格の人:婚姻や在留資格の取得の時点では届出は不要です。届出が必要になるのは、配偶者と離婚・死別したとき(入管法19条の16第3号・事由から14日以内)です。
【会社】外国人雇用状況届出(ハローワーク)=ここが最重要
ここが、外国人雇用に慣れていない会社がもっとも落としやすいポイントです。
外国人雇用状況届出は、労働施策総合推進法28条に基づく“事業主の義務”です。ポイントは3つ。
- 義務が発生するのは「雇入れ」と「離職」のとき。在留資格が雇用継続中に変わったこと“そのもの”は、新たな届出義務のトリガーではありません。
- ただし、外国人を初めて雇った会社は、そもそも“雇入れ時”の届出を出していないことが多い。制度自体を知らないと、この最初の義務がまるごと抜け落ちます。
- 届出を怠る・虚偽の届出をすると、30万円以下の罰金の対象とされています(同法40条)。
届出の経路は、その人が雇用保険に入っているかで変わります。
| 区分 | 届出の方法 | 期限(目安) |
|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者 | 「雇用保険 資格取得届」の外国人欄(在留資格・在留期間・在留カード番号など)で兼ねる | 原則、雇入れの翌月10日まで |
| 雇用保険の被保険者でない | 「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を別途提出 | 雇入れ・離職の翌月末日まで |
確認のコツ:雇用保険に入っている場合でも、資格取得届の外国人欄が空欄のまま提出されていると、実質的に届出が不完全なことがあります。まずは「初回の雇入れ届出が出ているか/外国人欄が埋まっているか」を確認し、未提出なら遅れてでも提出するのが基本です(提出方法はハローワークに相談できます)。
なお、特別永住者や外交・公用の在留資格の人は、この届出の対象外です。
就労制限が変わったら、会社は在留カードを再確認
身分系の在留資格(配偶者等・永住者・定住者 など)に変わると、就労制限がなくなります。会社が旧資格のままの認識でいると、勤務内容の扱いで混乱が起きたり、逆に制限があると誤解したりします。
変更後の新しい在留カードを会社が再確認することは、法律上の届出とは別に、不法就労助長を防ぐ実務としても重要です。人事・総務が在留カード番号や在留資格の記録を更新しているか、あわせて確認しておきましょう。
社会保険・国民健康保険・住民票の確認
- 社会保険(健康保険・厚生年金):勤務先経由で加入している場合、在留資格の変更だけで手続きが変わることは通常ありません。ただし、配偶者の扶養に入るなど扶養関係が変わる場合は手続きが必要です。
- 国民健康保険・国民年金:会社の社会保険に入っていない場合、市区町村の窓口で在留資格変更に伴う確認・届出が必要になることがあります。
- 住民票:在留カード番号が同じであれば通常は自動で反映されますが、念のため市区町村で在留資格欄の反映を確認すると安心です。
よくある質問
Q1. 在留資格が変わっただけで、会社はハローワークに届け出る義務がありますか? A. 変更“そのもの”は義務のトリガーではありません。義務は「雇入れ」と「離職」のときです。ただし、初回の雇入れ届出が未提出なら、それを出す必要があります。
Q2. 会社が外国人雇用の届出を知らないようです。どうすればいいですか? A. 届出は会社自身の義務なので、制度を伝えて会社に対応してもらうのが基本です。未提出なら遅れてでも提出できます。まずは「初回の雇入れ届出が出ているか」を確認してもらいましょう。
Q3. 就労資格から配偶者の在留資格に変わりました。契約機関の届出は必要ですか? A. 身分系の在留資格は契約機関・活動機関に関する届出の対象外です。以後、その届出は不要になります。
Q4. 届出を出し忘れていたら罰則はありますか? A. 外国人雇用状況届出を怠る・虚偽届出は30万円以下の罰金の対象とされています。気づいた時点で早めに提出することが大切です。
Q5. 本人がやる届出と会社がやる届出、両方必要なこともありますか? A. あります。変更先が就労資格なら本人の機関届出、会社は雇用状況届出、と主体の違う手続きが並行することがあります。主体ごとに切り分けて確認しましょう。
まとめ
- 在留資格の変更は「許可がゴール」ではなく、本人・会社それぞれに続く手続きがある
- 本人:変更先が就労資格なら契約機関の届出(14日以内)/身分系なら機関届出の対象外/配偶者系は離婚・死別時のみ
- 会社:外国人雇用状況届出(労働施策総合推進法28条)。義務は雇入れ・離職時だが、初めての外国人雇用では“最初の届出”が抜けやすい。未提出は30万円以下の罰金の対象
- 就労制限が変わったら、会社は新しい在留カードを再確認(不法就労助長の予防)
- 社会保険・国保・国民年金・住民票は、扶養や加入状況の変化があるときに確認
免責事項
本記事は2026年7月時点の一般的な情報をまとめたものです。制度・条文・様式・罰則は改正されることがあり、個別のケースで必要な手続きは在留資格の種類や雇用形態によって異なります。実際の手続きは、出入国在留管理庁・ハローワーク等の公式情報や、担当の専門家にご確認ください。本記事の筆者は行政書士試験の受験中であり、現時点で行政書士登録はしていません(個別の手続きの代理・相談業務は行っていません)。


