外国人を雇い入れたとき、「携帯電話をどうするか」が問題になる会社と、まったく問題にならない会社があります。
先に結論を書きます。
元留学生を採用する場合、この記事は読む必要がありません。
日本での生活が数年ある人は、すでに回線も銀行口座も持っています。会社が関与する場面はありません。
問題になるのは、海外から直接来た人を受け入れる場合です。
| 採用パターン | 携帯電話が問題になるか |
|---|---|
| 元留学生 → 就職 | ならない(回線・口座を既に持っている) |
| 海外から直接採用(技術・人文知識・国際業務など) | なる |
| 技能実習・特定技能 | なる(来日直後・寮生活・日本語も限定的なことが多い) |
つまりこれは「外国人だから」の話ではなく、「来日直後だから」の話です。同じ外国人従業員でも、日本での生活歴によって必要な支援がまったく違うという点が、実務では見落とされがちです。
この記事は後者を受け入れる会社、特に複数名をまとめて受け入れる会社向けの整理です。
この記事は2026年7月時点の公的機関・各社の公開情報をもとにした一般的な整理です。制度や各社の条件は変わるため、実際の手続き前に最新情報をご確認ください。
1. なぜ来日直後は本人が契約できないのか
まず前提として、来日直後の外国人は携帯電話の契約でつまずきやすいという事情があります。逆に言えば、この3つが解決している人(=元留学生など)は、日本人と同じように契約できます。
理由は主に3つです。
| 詰まる理由 | 中身 |
|---|---|
| 銀行口座がまだない | 口座振替が選べない。クレジットカードも作れていない |
| 住民登録が済んでいない | 住民票が出せず、本人確認や住所確認が通らない |
| 在留カードの本人確認が通らない | 2026年6月の新様式で、各社のオンライン本人確認が対応途中 |
3つ目は2026年に入って発生した新しい事情です。
2026年6月14日から在留カードが新様式になり、券面から「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」の4項目が消えてICチップに移りました。これにより、券面を撮影して確認する方式のオンライン本人確認が一時的に機能しなくなる事例が出ています。
会社側から見ると、「本人に任せておけばそのうち契約できる」とは限らない時期にある、ということです。
2. 法人契約と個人契約の分かれ目
判断軸を並べると、次のようになります。
| 判断軸 | 法人契約 | 個人契約 |
|---|---|---|
| 来日直後でも開通できるか | できる(会社の与信で契約) | 口座・在留カードの状況次第 |
| 初期費用の負担 | 会社 | 本人 |
| 在留期間の縛り | 受けにくい | 受けやすい(後述) |
| 退職時の回収 | 回線を止められる | 会社は関与しない |
| 私用との線引き | 必要(就業規則で定める) | 不要 |
| 管理コスト | 台数分かかる | ゼロ |
分かれ目は「来日直後かどうか」と「業務で使うかどうか」です。
- 業務で使う(現場連絡・シフト共有・多言語アプリ)→ 法人契約が素直
- 私生活用(家族への連絡・生活情報)→ 個人契約が素直。会社は開通の手助けに留める
両方を1台で兼ねると、退職時と私用の線引きで揉めやすくなります。
3. 在留期間と契約期間の関係に注意
個人契約を選ぶ場合、在留期間が契約に影響する場面があります。
代表的なのが端末の分割払いです。在留期間の満了日が分割払いの期間に満たない場合、分割を断られることがあります。24回払いを組もうとして、在留期間が1年しか残っていない、というケースです。
対応としては次のいずれかになります。
- 端末を一括購入する
- SIMのみ契約して、端末は本人が用意する
- 在留期間の更新後に改めて契約する
法人契約であれば、契約主体が会社なのでこの問題は起きません。来日直後で在留期間が短い従業員が多い場合、法人契約のほうが素直という判断になります。
4. 給与天引きは慎重に
会社が回線を用意して、費用を本人から給与天引きで回収するという方法を検討する会社は多くあります。実際、検索でもこの組み合わせが調べられています。
ここは注意が必要な領域です。
労働基準法には賃金全額払いの原則があり、賃金からの控除は原則として認められていません。例外として控除するには、労使協定が必要とされています。
つまり、「会社が立て替えて給与から引く」という運用を始める前に、次の確認が要ります。
- 労使協定を締結しているか
- 控除する項目・金額の根拠が明確か
- 本人が内容を理解して同意しているか(言語の問題を含む)
3つ目は外国人従業員特有の論点です。給与明細に見慣れない控除項目が増えることになるので、説明が伝わっていないと不信につながります。母国語またはやさしい日本語で、何がいくら引かれるのかを書面で渡しておくのが安全です。
具体的な手続きは社会保険労務士など専門家に確認してください。
5. 会社がやるべき5つの実務ポイント
法人・個人どちらを選ぶにせよ、会社側で押さえておく点をまとめます。
① 入社前に「いつ開通できるか」を伝える
来日直後は開通まで日数がかかることがあります。入社初日に連絡手段がないという事態を避けるため、暫定的な連絡方法(会社の貸与端末、寮の固定電話、社内チャット)を決めておきます。
② 支払い方法の選択肢を把握しておく
口座振替が使えない期間は、クレジットカード・コンビニ払い・プリペイドなどが代替になります。会社が「口座ができるまでの数か月をどうするか」を提示できると、本人が迷いません。
③ 在留期間の満了日を管理表に載せる
在留期間は雇用管理そのものに必要な情報です。携帯契約だけの話ではなく、更新時期の管理と一体で持っておきます。
在留カードの券面には在留期間の満了の日が引き続き記載されているので、目視で確認できます(券面から消えたのは「在留期間」という長さの表記のほうです)。
④ 退職時の回収ルールを先に決める
法人契約の場合、退職時に回線と端末をどう扱うかを就業規則または貸与規程に書いておきます。口頭の運用だと、退職時にトラブルになります。
- 端末の返却時期
- 回線の停止タイミング
- 番号を本人に譲渡するか(MNPを認めるか)
⑤ 私用の扱いを決める
法人契約の端末を私用に使ってよいかを明示します。禁止するなら理由も添えたほうが納得されます。曖昧なまま黙認すると、後から止められなくなります。
6. どう選ぶかの目安
| 状況 | 現実的な選択 |
|---|---|
| 現場で連絡が必須・来日直後が多い | 法人契約(会社が用意する) |
| デスクワーク中心・在留期間が長い人が多い | 個人契約+開通の手助け |
| 少人数・都度採用 | 個人契約。ただし初期の連絡手段は会社が用意 |
| 寮や社宅で共同生活 | Wi-Fiを会社が用意し、回線は個人という分担も成立 |
「全員に法人携帯」か「全部本人任せ」かの二択にしないのがポイントです。業務連絡の必要性で分ければ、コストは抑えられます。
7. まとめ
- 元留学生の採用ならこの論点は発生しない。問題になるのは海外から直接来た人
- 来日直後は口座・住民登録・本人確認の3つで契約が詰まりやすい
- 2026年6月の在留カード新様式で、オンライン本人確認が一時的に通りにくい時期がある
- 業務利用なら法人契約、私生活用なら個人契約が素直な分け方
- 個人契約では在留期間が端末の分割払いに影響する
- 給与天引きは労働基準法24条の論点。労使協定の有無を確認し、専門家に相談する
携帯電話は些細なことに見えますが、連絡が取れないことは業務に直結します。採用が決まった時点で、開通までの段取りを決めておくと立ち上がりがスムーズになります。
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