外国人への重要事項説明を英語で行うには|宅建士が押さえる様式とIT重説【2026年8月版】

外国人への重要事項説明を「何を説明するか(宅建業法35条)」「誰が説明するか(宅建士)」「どう説明するか(IT重説)」の3段階で示す図 realestate

※本記事の情報は2026年8月時点の法令・国土交通省の公表資料に基づく情報提供です。個別の取引における対応については、宅地建物取引業法を所管する部署または専門家にご確認ください。

前回は「登記事項証明書の読み方」(R5)で権利関係の確認方法を扱いました。今回はその続編として、外国人入居者・購入者への重要事項説明という、宅建士の実務でますます頻度が上がっているテーマを取り上げます。

「英語で説明してよいのか」「翻訳した書面を渡せば足りるのか」「トラブルになったとき、どこで責任が問われるのか」——この記事では、この3つの疑問を、法律上の説明義務の範囲IT重説の実施要件の2段階に分けて整理します。


重要事項説明とは何を指すか

宅地建物取引業法35条は、宅地建物取引業者が契約前に、宅地建物取引士をして重要事項を記載した書面(重要事項説明書)を交付して説明させる義務を定めています。

第三十五条(重要事項の説明等)

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第35条第1項柱書)

記載事項には、登記記録に記録された事項、法令上の制限、飲用水・電気・ガスの供給施設の整備状況、契約解除に関する事項などが含まれます。「何を説明するか」は法律で決まっており、言語を変えても説明義務の範囲自体は変わりません。


英語での重説は可能か

宅建業法は、重要事項説明を日本語で行うことを直接義務付けてはいません。ただし、実務上は次の点に注意が必要です。

  • 重要事項説明書という書面自体は、宅建業法が求める記載事項を満たす必要がある。英語版を別途用意する場合も、日本語の原本と内容が一致していることを確認する
  • 説明を行う宅地建物取引士本人が、英語で正確に法的内容を伝えられるか(通訳を介する場合は、通訳内容の正確性も宅建業者側の責任範囲になり得る
  • 「英語で説明した」という事実だけでなく、借主・買主が内容を理解した上で契約に至ったことを後から示せる記録(説明日時・使用言語・担当者を記載した実施記録等)を残しておく

宅建業法・同施行令・同施行規則、および国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を確認する限り、重要事項説明を外国語で行うこと自体を制限・禁止する直接の規定は見当たりません。同時に、外国語での説明を義務付ける規定もありません。

なお国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」では、実務対応Q&Aとして次のように示されています。

Q12 日本語の契約書を使用して良いのですか。

A12 原則として日本語の契約書を使用して良いですが、内容を十分に説明することが重要です。契約内容の説明の際、賃貸住宅標準契約書の外国語訳(第5章)を参考にしてください。

出典:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(実務対応Q&A)

同ガイドラインでは、重要事項説明書・賃貸住宅標準契約書などの英語を含む多言語の見本が提供されています。

「日本語の重要事項説明書を正本とし、外国語訳を説明の補助に使う」というのが、ガイドラインの考え方に沿った実務上の組み立て方です。


IT重説:対面でなくても重要事項説明はできる

テレビ会議等のITを活用した重要事項説明(IT重説)は、賃貸取引で2017年(平成29年)10月1日から、売買取引で2021年(令和3年)3月30日から本格運用されています。さらに2022年(令和4年)5月18日からは、重要事項説明書の電子交付も解禁されました。外国人入居者が来日前・海外在住のまま契約するケースでは、このIT重説が実務上の主要な選択肢になります。

IT重説の実施要件(賃貸借の場合)

国土交通省のマニュアルでは、概ね次の要件が示されています。

  • 説明の相手方が画面上で書類(重要事項説明書)を視認でき、双方向でやりとりできる環境であること
  • 重要事項説明書及び添付書類を説明前に相手方へ送付(または承諾を得て電磁的方法により提供)していること。書面には宅地建物取引士の記名が必要です(2022年5月の改正で押印義務は廃止され、記名のみとなりました)
  • 説明を行う者が宅地建物取引士であることを、画面上で相手方が確認できること。宅建士証をカメラにかざし、相手方に氏名等を読み上げてもらうなどして、相手方が明瞭に視認できたことを確認することまでが遵守事項とされています
  • 双方向でリアルタイムに音声・映像のやりとりができる環境であること

出典:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和4年4月策定/令和6年12月版

⚠️ かつて存在した「賃貸借契約編」「売買編」の個別マニュアルは、2022年5月の書面電子化解禁にあわせて一本化されています。古い版を参照していると要件を取り違えるので、必ず最新版を確認してください。

外国人入居者の場合、母国からオンラインで重要事項説明を受け、来日後すぐに入居するという流れにIT重説がそのまま乗ります。言語面の配慮(英語対応可能な宅建士の同席、通訳の手配)と組み合わせることで、対面を前提にしていた従来の実務より柔軟に対応できます。


実務チェックリスト

#確認項目
1重要事項説明書(日本語原本)の記載事項が宅建業法35条の要求を満たしているか
2英語版を用意する場合、日本語原本との内容の一致を確認したか
3説明を行う宅建士が、英語で法的内容を正確に伝えられるか(通訳の要否)
4IT重説を使う場合、宅建士の記名がある書面の事前送付(または電磁的提供)・双方向映像音声・宅建士証の視認確認の要件を満たしているか
5説明日時・使用言語・担当宅建士名を記録に残しているか
6外国人入居者向けの多言語契約書・重要事項説明書のひな形を用意しているか

よくある質問

Q. 英語版の重要事項説明書だけを交付すればよいですか? A. 宅建業法が求める書面の記載事項を満たしていれば形式上の問題は生じにくいですが、トラブル時に「どちらが正本か」を巡って争いになるリスクがあるため、日本語原本とセットで交付し、内容の一致を確認しておくのが実務上安全です。

Q. IT重説は外国人入居者にも同じ要件が適用されますか? A. IT重説の実施要件(双方向映像音声・書面の事前送付等)は、相手方の国籍によって変わるものではありません。海外在住のまま契約する場合の時差・通信環境への配慮は別途必要です。

Q. 通訳を介した説明でトラブルが起きた場合、責任はどこにありますか? A. 個別の事案により判断が分かれます。宅建業者・宅建士が説明義務を尽くしたと言えるかは、記録(説明内容・使用言語・通訳者の有無等)の有無が影響します。個別の法的判断は専門家にご相談ください。


まとめ

  • 重要事項説明の記載事項は宅建業法35条が定めており、言語を変えても義務の範囲自体は変わらない
  • 英語での説明を制限する直接の規定はなく、国交省ガイドラインも「原則として日本語の契約書を使用してよいが、内容を十分に説明することが重要」としている。日本語原本との内容一致・説明記録の保存が実務上の安全策
  • IT重説は書面の事前送付(宅建士の記名。押印は2022年5月に不要化)・双方向映像音声・宅建士証の視認確認等の要件を満たせば実施可能。海外在住のまま契約する外国人入居者との相性がよい
  • 実務チェックリストの6項目を、契約前に確認しておく

登記事項証明書の読み方については「登記事項証明書の読み方」、外国人入居者との多言語対応全般については「外国人賃貸の多言語対応」もあわせてご覧ください。


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